目に見える改革開放・・・in北京 2002
旅立ち
年末から微熱は続いていた・・・。
「ただの風邪です。ひどい症状だと、あなたが思い込んでいるだけ。精神的に弱いの。放っておけば治ります」
と、ゆーM病院の内科医師・Kの言葉を信じて、ただ風邪薬を飲んでいたものの、状況は改善の余地なし。
仕方ないので、別の耳鼻咽喉科を受診した途端、「もっと大きな病院にすぐに行って」
・・・で、紆余曲折の末、大病院にて入院・手術を宣告されたのが年明け。
その時思ったのは、
やばいっっ・・・、中国行きのチケットもう取っちゃったよ・・・(汗)
そう、行き先は例によってアジアなのだけれど、それは韓国でもなく、台湾や香港でもない中国。中国には入国のためにビザがかかるのだっ。
中国に関して、去年から個人旅行を目的としたビザは、旅行代理店を通さなくてはとれないしくみになっている。
代理店にもよるが、その額およそ七千円。
チケットにプラスされるこの金額は、かなり痛い・・・。
こんなにお金払ってるのに、いまさらキャンセルなんて出来ないって・・・!
てな、あくまでも貧乏くさい考えのもと、私は即座に心に決めた。
お医者さんに内緒で、中国行っちゃお(はあと)
帰国した翌日から入院とゆー、他人が「やる」と言い出したら、即座に
「莫迦じゃない?やめなって、死にたいの?」と怒鳴るよーな無謀な計画をあっさりと組んでしまうあたり・・・。
病弱なくせに、とんでもない愚か者だったりする。
かくて、2002年、一月の二十四日。成田に向かった私は、機上の人となった・・・。
到着
さて、一年ぶりの北京である。
空港に降り立って驚いたのは、去年に比べて、本当に気温が暖かいこと。日中の最高気温は五度しかないはずなのに、風もなくて、すごく穏やかな空気です。
空港内の無人両替機は、去年は一万円変えたら「後はもう現金はないです」とばかりに動かなくなってしまっていたのに、今年はいくらでも動いてくれます。しかも、日本語の検索画面で実に分かりやすい。
ただし、レートはまた去年よりも更に悪くなっていました。
一元が16.6円。切り上げれば、約17円もします。
同時に換えた米ドルや香港ドルに比べて、ものすごいレートです。日本円がいかに弱くなっているか・・・ですね。
宿泊
ホテルは例によって、冬場はめっちゃ安くなる五つ星ペニンシュラです。
大理石のシャワー室、高そうな調度品の部屋、バスローブやシャンプーのアメニティーは揃っているのに、何故か髪をとかすブラシがないのも去年と同じ・・・。地下には中国銀行が入っていて、両替もまったく困りません。
ただ、変化していたのは・・・。
まづ一階にあった、レストランが地下に降りた事。一階はカフェになって、夜にはレストランで食事をしながら・・・ではなく、恒例の生演奏をカフェで聴く形式に変えたようです。
でも、朝食のバイキングの時に行く、採光を押えた地下のレストランは、お洒落な作り。
各テーブルにセッティングされた食器も、無印良品を思わせるシンプルなデザインで落ち着きます。
広く開放的なフロア―に、それぞれの料理のカウンターが並んで、スクランブルエッグなどは、カウンター越しに直接注文して作ってもらえます。
料理の内容は、十種類以上あるパン。五種類のシリアル。
飲み物はコーヒー、紅茶、オレンジジュース、アップルジュースと何故かいつもある、スイカジュース、ミルク。
各種卵料理と、八種類ほどの炒め物。
ご飯、お粥、冷奴、納豆、味噌汁、肉まん、アンマンなど各種万頭。漬物、焼き鮭、焼き海苔と、日本食にも困りません。せっかくの中国滞在中ですから、日本食は食べませんけどね(^^;)
その他、朝からたっぷりチャーハンだってあります。デザートは各種フルーツとヨーグルトにサラダ。ケーキがあればもっといいんですけど・・・、さすがに朝からケーキはないよーです。
かつては、少しでも紅茶に口をつけようものなら、ワンこ蕎麦状態でおかわりを注いでくれた給仕の方々も、「いりますか?」といちいち訊ねてから注いでくれるようになりました。
もうひとつ、ペニンシュラで変化していたこと。
地下にあるブランドショップモール。ここがやたら、クローズか貸し店舗・・・。
なかなか寒い風景です。
台湾でも感じた不況の風は、どうやらオリンピックが決まったこの国ですら吹き荒れている模様・・・。
街へ
とりあえず、荷物を置いてから、街へと繰り出してみました・・・。
そして、驚いてしまいました。
ペニンシュラは東京でいえば、銀座のようなデパート街にあります。歩いてすぐに、巨大なショッピングモールがあるのですが・・・、そのひとつのデパート「緑屋」が綺麗さっぱり、跡形も無く消えていました。
たった一年で、あの巨大デパート、更地にしたんかい?
私の好きな喜餅は北京で知る所ではあそこでしか、売ってなかったのに・・・(;;)
仕方なく、その向かいに建つ更なる巨大デパート、新東安門市場へ入りました。

新東安門市場の地下には、昔の北京を再現したテーマパークのような一角、「老北京一条」があります。
そこには、このように妖しいジオラマが飾ってあって、観光客の目を楽しませてくれます。
さて、かつては世界最大のマックだった敷地を、どーんとぶっ潰して建てた新東安門市場。すさまじく広い、複合デパートです。上の階には映画館も入っています。
残念ながら、我が愛しのジャッキーチェンの新作は上映してませんでした。代わりにシュレックが明日から上映・・・と。
平日のせいか、不況のせいか、人影がまばらなのが、少しうら寂しい感がいなめません。
地下には老北京一条以外にも、たくさんの店舗が入ってます。とにかくこのデパートは広いのです。
その一角で、十元ショップをやっていました。
売っているのは、百円ショップと変わらない内容。でも、十元を日本円に換算すると、約170円。高いっっ!
そう・・・、以前は中国といえば、格安のイメージがついて回っていたのですが・・・、確実に都市部においては、物価がうなぎ上りに上がっています。物によっては、この十元ショップみたいに、日本よりも割高だったりします。あうっ。貧乏人には辛い現実です。
とはいえ、食べる物はやはり安い。マックシェイクは四元(68円)で買えるのです。
帰国の翌日から入院しなくてはならないので、その費用を捻出しなくてはならない貧乏人。これは屋台で渡り歩くなりして、節約しなくては・・・。
ってんで、同じく地下にあるスーパーに入ります。
スーパーは自選市場と呼ばれ、万引き防止のため、入り口で荷物を預けて札を貰います。買い物が終わってから、札と荷物を交換する・・・という仕組みで、地方に行けば、着ているコートまで脱がされてしまいます。いかに万引きが多いか、忍ばれます。もちろん、最近では、日本と変らない荷物なんて預けないで済むところも多く出来ていますが・・・。
で、話は屋台食べ歩き準備。
中国の食事は美味しいですが、何かと油っこいので、ペットポトルのウーロン茶を調達しておくのです。
このウーロン茶、優れもので、一緒に飲めば大抵の油料理でも後で胸がむかつく事がなくなるのです。
がっ、中国は甘党の国。ケチャップもマヨネーズも、ポップコーンですらお砂糖を入れてある国ゆえ、ウーロン茶や緑茶にも砂糖入りが常識。
紅茶はストレートが一番。と思っている人間が、歯が歯茎から浮き上がるような砂糖入りウーロン茶を飲むのは酷と言うもの。
でも、ここのスーパーなら、砂糖なしウーロン茶が売っていたのです。去年は・・・。
・・・けれど、需要が少ないストレートウーロン茶。
今年は売っていませんでした。・・・ああっ(;;)
(この問題に関しては、ジャスミン茶の葉っぱを買って、ホテルに備え付けの電熱器で沸かしてペットボトルにつめて持ち歩く・・・という、方法でなんとかクリアいたしました)
散策
さて、翌日・・・。
とりあえず、近所の本屋「外文書店」で12元(204円)で北京の市内地図の本を買いました。これで、自分の足でイロイロと回る事が出来ます。
で、ホテルから歩いていける、地元民の世界を堪能すべく・・・。でも、王府井周辺はいうなれば東京で言う所の「銀座」高級すぎて、物価も高い・・・。貧乏人には、何かと不便・・・というわけで、王府井とは逆方向へ歩いてみました。
いわゆる一般商店街のような大通りをてくてく・・・、歩いてみます。果物屋さんにCDショップ、ブティック、薬局、郵便局・・・とごく普通のお店ばかりでほっとします。
途中、道角にあるタバコ屋さんでサンザシを売っていました。

サンザシ。背後に見えるのは公衆トイレの看板。
サンザシは中国の冬を代表するおやつです。長い串に姫林檎に似た丸くて赤いサンザシの実(味は姫林檎とは似ても似つかないです。中はブツブツの種がいっぱいで、少し酸味と苦味があります)を刺して、周りを溶かした水あめでコーティングして固めたものです。
値段は中国でよくある話ですが、お店によって幅がありまして、サンザシのみなら一本2元(34円)から〜。イチゴだったり、キュウイだったりが入れば最高で8元(136円)になります。
これをバリバリ食べながら、さらに道の先へと進みます。
すると、大通りの交差点の角に「朝陽門菜市場」という、大きめのスーパーがありました。
衣料品から食料品、小さな本屋の店舗も含んだまあ・・・イトーヨーカドーのような所です。
一階はお茶やお菓子、お酒や生鮮食品がありました。食品はどれも量り売りですが、野菜などはあまり新鮮には見えませんでした。
二階に上がると、日用品雑貨のコーナーと、本屋さん、CD屋さんがありました。
ここに来るまで通りにあったCD屋さんは大抵アルバム一枚が35〜65元(595円〜1105円)でしたが、ここのCDは種類は選べませんが、一枚10元(170円)からあります。
お店の人に聞くと、古いものしか扱っていないから安い・・・とのこと。日本のものでは喜多郎のシルクロードが16元(272円)がありました。それからエンヤは14元(238円)です。つい、三枚ほど買ってしまいました。
帰国後、聞いてみましたが音質に異常はないようで、よしとします。エンヤは・・・歌詞カードがついてなかったけども。
それからまたホテルの方へ戻ってから、地下鉄東単駅へ出ました。切符は去年と変らず、一定区間は何駅乗っても3元(51円)です。
建国門駅で乗り換えて、前門駅で降車。
前門・・・は、つまりラストエンペラーの元住い、紫禁城の入り口天安門広場の前にある駅です。

天安門
大柵欄
去年は同じ季節に雪で覆われていましたが、暖かい今年は雪もなく、あいも変らずだだっ広い広場です。
今回は紫禁城には入らないで、逆方向に伸びる観光スポット・・・オノボリサンが行くお土産屋の並ぶ大柵欄へ向かいます。
大柵欄は・・・、印象をいうなら上野など、オノボリサンがお土産を求めて歩く、ちょっぴりレトロな匂いのする所です。ちなみに、北京の人にとっては、北京以外に住む人は、それが香港であろーが、東京であろーが、ニューヨークであろうが、全部オノボリサンになります・・・(^^;)気分的には、ニューヨークのが都会だと思うんでけど・・・。
が、ここは中国。オノボリサンは、イコール田舎者。都会の物価は高いんだぜ?ってな雰囲気で、同じ商品でもぼったくりが常識。
デジカメの電池がきれかけたので、補充しようとしたら、先程のイトーヨーカドーで四本で四元だった単三が、なんと一本で五元だと言います。周囲のどこのお店で値段を聞いても同じなので、この周辺ではそれが水準・・・らしい・・・、でも、高すぎます。ってんで、仕方なく、ここからは写真を少し控える事にしました。
少し歩くと、古ぼけたいかにも老舗ってな雰囲気の御茶屋さんがありました。
入ってみても、お店の人は「何が欲しい?」「これ買いなよ」みたいな愛想を振り撒くことはしません。狭い店内でただ、お客の動きをじっと見ています。こちらも、それとなく店主のおじさんを観察してみました。五十代ほどのおじさんは、地味ではあっても清潔そうな身なりをしています。愛想はなくとも、売り物の品質に命を賭けているタイプ・・・に、見えなくもあれません。
表情もどこか穏やかで、そこら辺のおみやげ物屋とは違って、ぼったくりに命をかけているようには思えない顔だわ・・・。
ぼったくりに賭ける人は、視線がどこかすさんでいて、本能的に「この人はボル」というのが、なんとなく分かるようになっているのです。このおじさんの視線には、そのすさみ、が見られませんでした。
そこで、あくまでも根拠のないカンをたよりに、この店は安全、と判断を下しました。
免疫力をつける・・・と日本のテレビで紹介されていた「羅布麻茶」(らふまちゃ・・・中国読みだと、ロウプゥマァチャア)を求めてみましたが、第一声で聞かれたのが「どこが悪いの?」と真剣な表情。まるで不治の病に冒された病人を見るような真剣な目です。なんとなく、たじろぎつつも、
「え?・・・んと、風邪とかひきやすいから、・・・で、このお茶を飲むと免疫力がつくって聞いて・・・」
と応えますと、おじさんは明らかにホッとしたように力をぬきました。なーんだ、重病人かと思っちゃった、ってな感じです。
今回、この旅で羅布麻茶はさんざんっ、薬局と御茶屋さんで聞きまくりましたが、結局どこにも売ってませんでした。
郊外のお茶市場に行くか、重病の末にお医者さんが処方するかでしか、一般販売はされていないそーです。
日本に帰れば、それこそマツキヨあたりで品質は怪しいものの、いくらでも売っているのですけどね。・・・まあ、日本人に売れる、と広まれば、あっと言う間にこの土地でも普及することは間違いなし・・・ですが・・・。
まあ、話は御茶屋さんに戻ります。
「羅布麻茶はないけけど、風邪にはこれがいいよ」と、御茶屋さんは苦丁茶というものを出してくれました。50グラムで八元(136円)です。名前からして苦そうなので、
「苦い・・・?」
「いや・・・、苦くない!」断言。
「あ・・・そ・・・」
断言するので、とりあえずそのまま買いました。おじさんは、親切に煎じ方と飲み方を教えてから、お茶をビニール袋に入れてくれました。
帰国後、今現在風邪をひいてますが・・・、やっぱり苦そうでまだ飲んでいません(^^;)
天壇公園
さて、一端細道から大きな通り「前門街」へ出てから、ひたすらに南下してみます。目的は、今回の旅で唯一の観光スポット、天壇公園(てんだん公園・・・ティエンタンゴンユェン)へ行くためです。
途中で、調度お昼になったので、前門街の大通りにある老舗、「開封小籠包店」に入りました。
内部は古いながらも、2階建てで、所狭しと丸テーブルがいくつも並んでいます。
二階に案内されて、小籠包を一籠二十個入り九元(153円)と八宝粥五元(85円)を頼みます。
一昔前、中国の時代劇に出てきそうな雰囲気のお店で、通りを流れる車など眺めつつ、ゆったりと昼食です。
小籠包はごま油のきいた味で、八宝粥は八種類の穀物を甘い味付けで煮込んだもの。どちらも、かなり満足のいく味です。・・・でも、小籠包はやっぱり、ディンタイフォンのが美味しい・・・。あそこのを食べてから、普通の小籠包では完璧に満足できない舌になってしまった。ううっ(^^;)
腹ごしらえが済んだら、再び南下。排気ガスに包まれた道を、てくてく、歩き続けて、天壇路にぶつかった所で左折。この角に、雑貨スーパー「天橋菜市場」を発見。中を見て回りましたが、特にめぼしい物はなく、天壇路を東向きに歩き始めます。
しばらくすると、道の右手側にどこまでも続く高い壁が始まりました。これが天壇公園の壁です。そのまま進んで、天壇北門の入り口から入ります。
天壇公園は市街に南部に位置する、静かな公園です。
天壇ってゆーのに、つまり、祭壇の意味で、歴代の皇帝たちがここでお祈りを捧げた神域・・・。
入場料は十元(170円)、その他に、祈念殿と呼ばれる建物、天に祈りを捧げた祭壇、圜丘壇(えんきゅうだん)にそれぞれ入場料がまた十元ずつかかります。
お金を払わないと入れない公園なので、人影はまばらです。少し中心部から離れていめためか、天安門ほど人が来ないのかもしれません。
中にあったトイレは、水洗でちゃんとドアがついていて、清潔。ただし中国のどの場所でも言えることですが、、この国のトイレットペーパーは水溶性ではないため、使用後は横にあるくずかごに入れます。
臭くないのが、ありがたかったですねー(^^)
本来の正門とは逆方向の裏門から入ったので、公園を逆走する形で見学することになりました。
まず、いきなりメインディッシュの祈念殿。

祈念殿
北京の建物としては、天安門、万里の長城、紫禁城のその次くらいに有名なやつです。
と・・・、ここでデジカメが電池切れ・・・(^^;)
急遽、三十元(510円)で二十四枚撮り、フラッシュは付いていないタイプの、使い捨てカメラを買いました。
で、撮ったのが下。圜丘壇・・・。
圜丘壇
・・・画質はそれほど悪くないです。
さて、この天壇・・・、やはり神域なのでしようねー。
祈念殿の周囲を取り囲む樹木の間を大きく渦巻くのは、言葉では形容し難いような、大地の気の流れ・・・。風水で言うところの龍脈に似たような物・・・を、気のせいか・・・感じました。
でも深呼吸すると、ものすごく心地が良いです。細胞のひとつひとつが、活性化して、若返るような感じ・・・とでも言いましょうか・・・。毎日ここで、お散歩したら、きっと健康になれそうな気がします。
そういえば・・・、万里の長城の一部でも、これに似た感じを受けました。ふむ・・・、何が流れているんでしょうねー?
紅橋市場
ここらで、日が傾いて来ましたが・・・。
天壇の隣には、「紅橋市場」という、大きなデパートがあります。
どちらかというと、地元民より観光客相手のお土産店の色合いの濃い所なのですが・・・、まあ、ここまで来たのですから、立ち寄ってみる事にしました。
デパートの内部は、ごみごみしていて、薄暗い照明です。ディスプレイの野暮ったさは、中国によくある昔ながらの地方デパート、といった所でしょうか?
でも、夕方という時刻のせいか、人はたくさんいます。
売っているものは、バッグ、靴、化粧品からおみやげ物まで。大抵のものが揃います。
一階の化粧品コーナー。ここでは、パールの粉が入った保湿クリーム、「迷奇」が売ってました。独特の香料が強いのですが、真珠の粉が入っているせいか、使い心地は悪くない一品です。
売り子は、若いお姉さんが三人。
ここは、デパートとはいえ、値切り交渉が可なので、とりあえず勝負です。(書き忘れましたが、今回の同行者はこのパールクリーム愛好者の、みっちゃんです)
「このクリーム、いくら?」
北京語で交渉を試みますと、一番年下っぽいお姉さんが電卓を手に、やってきて言います。
「一つ48元(816円)だけど、ひとケース(六個入り)を買うんなら、一つ45元(765円)にしてあげるわよ」
ここで、傍らのみっちゃんが囁きました。
「空港の免税で、同じのが42元だったわ」
空港は、一般の商店より相場はかなり高い所です。それが42ならば、これは相手が外国人なので、ふっかけているわけです。
あっさりかぶりを振って、とっとと踵を返す日本人。
「45?高い・・・。いらない」
「待って、じゃあ、いくらなら買う?」
「うーん・・・(値切りの鉄則。いきなり半額)22元(374円)」
「それじゃあ、無理よ。なら、43元・・・」
「いらない(あっさり)」
「ああっ、待って!!」
更に引き止めるお姉さん。引き止めるのは、まだ交渉の余地がある証拠です。
お姉さんは、先輩らしい少しお化粧の濃いもう一人のお姉さんを引っ張って来ました。新手のお姉さんは、にっこりと営業スマイル(ああ・・・この国でも、サービス業の愛想がよくなったのですねー)で、
「どこの国の人ですか?」
「(一瞬、台湾とか、バッくれようかなー、なんて思いつつも正直に)日本です」
「このクリームは、本物の真珠が入っていて、とても高級なものなんですよ」
「ええ、知ってます。さんざんっ、使ってましたから。空港の免税で42元でしたねー、同じ物が」
お互いに、にっこり・・・。
「なら、特別に38元(646円)、これでいいでしょう?」
と言いつつ、とっとと、ひとケースを袋に詰めてこちらの手に強引に押し付けるお姉さん。そうはならじと、押し返しつつ、
「いらない(にっこり)」
「いくらなら買う?」
「だから、22元」
「それじゃあ、36元。いいでしょ?」
「嫌。・・・25元」
お互いに、にっこり・・・。
ここでついに、売り場のリーダーらしき、短髪のスポーツマンのようなお姉さんが出てきました。
「うふふふ・・・。お嬢さん、いくらなら買ってくれます?」
「25元」
「では、35元で決定にしましょう?」
「(勝手に決定されてもねー)28元」
「34元」
「・・・いらない」
立ち去ろうとすると、慌てるリーダー。
「待ってよ!!32元(544円)これでどう?」
「うーん・・・・・・」
当初の816円が544円になりました。
一般小売商と違って、一応ここはデパート。これくらいが限界かもしれません。というより、いい加減疲れてきたので、交渉が面倒になりつつもあったので、ここで手を打つことにしました。地方都市や小売商なら、もっと安くなるのは分かっていましたが仕方がありません。北京は他よりも物価が高いのですから。
「OK、買うわ」
すかさず、下っ端のお姉さんが既に袋に詰めたクリームを手渡してきます。
とりあえず、箱と中味が一致したものか、ひとつずつ確認をしてから(これはやった方がいいですね。北京ではないですが、地方の店先で確認した所、中味を半分、売り子が使用したものをまた箱に詰めて売りつけられそうになった事があります)交渉が成立です。
売り買いの戦いが終ると、途端にお姉さんたちの間に緊張が解けて、いきなりフレンドリーになるのは、いつものこと。
戦いが終われば、とても気の良い人たちなのです。
「なーに?旅行で来たの?」
「観光バスで来たの?え?天壇公園の帰り?」
「どこで北京語習ったの?」
などなど、質問攻めにされつつ、
「じやーねー、また来てねー」
と、手を振って、売り場を後にしました。
二階からは洋服などが売られていました。
が・・・、服のデザインもいまいち・・・、日本に持ち帰ってもあまり着られそうもない色合いなので、ただ見て回るだけにしました。
最上階には、おみやげ物と一緒に、珊瑚や淡水パールの専門店がありました。
おみやげ物屋は、なんとっっ、そこらの小売店でひとつ6元くらいのキーホルダーが、十倍の60元とかで売ってます。
高すぎる・・・(汗)
と、ここで、みっちゃんが珊瑚のネックレスの前で足を止めました。真っ赤な珊瑚の玉を無数に連ねた商品が、たっぷりとテーブルに盛られています。
見れば地元民らしき中年女性が、交渉の真っ最中。
じーーーっと、見つめている視線に気付き、お店のおばさんが手招きます。
「何が欲しいの?」
欲しいのは、私ではなくみっちゃんです。
「通訳するから、自分で交渉してみる?」
訊ねると、先程までのパールクリーム交渉を見ていてやる気が湧いたのか、果敢に頷きます。
カーン。
試合開始っ。
「このネックレスはいくら?」
「380元(6460円)」
「ヴ・・・、高い(ウチは貧乏です)」
しり込みすると、おばさんはすかさず、一回り小ぶりな玉の物を取り上げました。
「こっちの玉なら280元(4760円)よ」
「あら・・・。負けてくれる?」
「いいわよ」
間に電卓を挟んで、交渉を始めた二人の横で、品物を選び続けている地元の人・・・(サクラかしら?)に、話し掛けてみます。
「こんにちは」
「こんにちは、・・・旅行者?」
「はい、地元の方ですか?」
「そうなの。ちょっと必要な用事が出来て、買いに来たんだけど・・・」
「ふーん。ところで、中国の女性はこーゆーネックレス、好きなんですか?」
「そうねえ・・・。友達の家に招待されたりしたとき、つけるわね。こーゆー・・・(血のように赤いのを指さす)が、割と人気かしら・・・。子どもの学校のXX(聞き取れない単語でした・・・汗)でも、使うのよ」
「ふーん。学校で・・・。で、どれを買うんです?」
「300元のものがいいんだけど・・・(値引き交渉中らしい)」
さて、振り返るとまだ交渉中のみっちゃんです。
「いくらになった?」
「今、220元(3740円)」
さらに電卓を叩いて、200元(3400円)を指す。
頷くお店のおばさん。交渉成立のようです。
おばさんは手早くみっちゃんのサイズにあわせて、留め金をその場で作ってくれました。それからシルクの赤い巾着を取り出すと、「この袋はサービスだから」と言って、ネックレスを詰めてくれます。
後日、「やっぱり、もっと値切れば良かったかしら・・・?」と、縫製の雑さから既に毛羽立っている巾着を片手にぼやいている、みっちゃんです。まあ、旅行のお土産としては、こんなもんですねー。
足つぼ
翌日です・・・。
たっぷりと並んだ朝のバイキングですが・・・、まったく食欲が湧きません。
かろうじて、クロワッサンひとつとオレンジジュースをすすって、身支度を整えました。が・・・。
どうにもだるいんです・・・(;;)
時刻はまだ朝の九時台。
部屋に帰ってから、速攻電話をとりました。
「すいません、足つぼマッサージをお願いしたいんですけど」
館内にあるマッサージフロントへ電話しました。
電話に出たのは、年配の男の人の声でした。
もちろんいっさい日本語は話せないようなので、はじめっから中国語で交渉です。
「どこのお部屋ですか?人数は?コースは?何時から始める?」
「部屋は・・・番。それで、足つぼで一人・・・。今からお願いしたいんです」
「まだ九時半だからねー。業務は十時からだけど?」
「なら、十時にお願いします」
「分かりました。十時になったら、行きます」
一端電話を切ってから、再びベルが鳴りました。
今度は女の人の声でした。
「十時に行きますので、鍵あけてくださいね」
「はーい」
確認の電話のようでした。
やがて、
十時五分過ぎ・・・。
部屋に現れたのは、二十歳そこそこの若いお姉さんでした。
足つぼなんて、痛そうだから嫌だわ。
と、のたまうみっちゃんは、部屋の横でテレビ観賞をしています。
お姉さんは大きなバックの中から、何かクリームを取り出しておもむろに私の足に塗り始めます。
手の親指の先で、ぐりぐりっとつぼ押しが始まりました。
台湾の時とは、違ってかなりお上品なマッサージです・・・。でも、疲れきっていたので、心地良い(^^)
値段はホテル内なので割高。三十分で140元(2380円)です。
「ふいー・・・、気持ちいい」
うっとり、夢見ごこちでいると、テレビでジャッキーチェンが出ました。
「おおっ!」
大げさに反応する、みっちゃん。
やっているのは歌番組で、既に亡くなったテレサテンのビデオを合わせて、デュエットしていました。
食い入るように、テレビにかじりつく日本人女性に、マッサージのお姉さんは怪訝そう。
「あのね、私の母はジャッキーチェンが大好きなの」
説明すると、お姉さんは気のない風に肩をすくめました。
「日本人って、みんなあの人が好きなのね・・・」
(もう中年のおじさんなのに)
と、言外に言っている感じで、思わず苦笑してしまいます。
確かに、若い世代のお姉さんには、もっとピチピチのアイドルの方がかっこよく見えますねー。
さて、三十分が過ぎて、マッサージも終了。
帰り支度を始めるお姉さんの側に、みっちゃんが寄って来ました。
「ねえ、そのクリーム、何て言うのか聞いておいて」
マッサージクリームに興味を示しています。
訊ねると、お姉さんは今使った大きな瓶のクリームは業務用だから、市販されていないと言いました。
「その代わり・・・、家庭ではよくこれを使うわね・・・」
言って取り出したのは、少し小ぶりな瓶。
「こっちなら、薬局で安く買えるから」
言って、頭痛の時にも効くし、使い方は・・・と親切に説明してくれました。
教えてくれたたクリームの名前を書き記してもらったので、お礼のチップを渡しました。
ちなみに、その市販されているクリーム。
翌日買って見ましたら・・・、なんか見覚えのある緑の小瓶に、小さな看護婦さんのマーク・・・。
なんとそれは「メンソレ−タム」だったのです(^^;)
ちゃんちゃん。
それでは、買い物に行きますかねー。と、出掛けたのですが・・・、
やはり・・・、昨日までの無理がたたったのか・・・、近所の新東安門市場へ出かけたものの、ふうっ・・・、貧血がきました。
これ以上の買い物は無謀・・・と、切り上げて、ホテルに戻りました。
やはり、足つぼくらいでは、回復できない所まで体力が落ち込んでいたようです。
言葉が分からないものの、大分街に慣れてきたみっちゃんを一人で買い物に出かけさせて、その日は夕方までゆっくりと昼寝してしまいました・・・(^^;)
ああ、もったいない・・・。

胡同(ふーとん)の小道
左手に見える赤い看板は、色々なタバコの箱が詰まったもの。
オリンピック開催に向けて、昔ながらの四合院と呼ばれる集合住宅と
その周囲に巡らされたフートンは今、
開発の波の中、次々と姿を消している・・・。
ケンタッキー?
中国はわりと鶏肉が好きな国だと思います。
お祝いに鶏肉は欠かせませんし、もちろん毎日の献立にも。
夕暮れの家路を急ぐ自転車の荷台にも、何気にじたばたもがく鶏が括りつけられている光景も珍しくありません。
そんなお国柄ですから、ケンタッキーもかなり進出していたりします。チキンナゲットとポテト、チキンバーガーとコーラのセットで、17.5元(298円)で、かなり満腹になれます。
ただ、お粥で一杯5元。ラーメンで八元くらいなので、けっこー高い部類に入る食事かも・・・。
そんなケンタですが・・・。
その横で、一見・・・ケンタのよーな店構えのとあるチェーン店がありました。

ケンタ・・・?
赤と青のツートンカラー。
店の看板は、カーネルサンダース・・・と思いきや、これが違う。
「永和大王」と呼ばれる、シャオロンポーなどの軽食屋です。
まず入ってから、レジで食べたい物を言って、お金を払います。
代わりにくれた引換券を持って、好きな席に座ると、フロア係りの人がその券を回収。料理が出来れば、席まで持ってきてくれます。
まあ、ファーストフードの飲茶(ヤムチヤ)版のよーな所ですね。
六個入りのシャオロンポーで六元(102円)チャーハンのセットで15元(255円)なので、まあ入りやすいことは入りやすいです。
味もまあまあ・・・。
ディンタイフォンには及ばないものの(当たり前か)不味くない。
ただし、飲み物が圧倒的にここは少ないのが難点といえば難点。
ホットミルク、ホットコーヒー、ホットオレンジしか、冬場はないんです。
夏になれば、冷たいココナッツジュースがあるらしい・・・メニューを見れば・・・。
でも、安い早い上手い・・・で、旅行中、何回か入ってしまいました。
帰国・・・。
こうして、体力のないものの、中国を堪能して帰国の途に着くわけで・・・。
オリンピックが開催される中国 北京。
今、この都市は物凄い急速な発展の波に飲み込まれていて・・・。
目の前にある風景が、ほんの一瞬で消え去ってしまうような、そんな忙しさに覆われていたりする。
でも、一歩郊外に踏み出せば、まだ昔ながらの懐かしい風景が残っていて・・・。
一年後、ここに来たらまた変ってしまっているかもしれないのだけど・・・。それに感傷を見出すのは、ただの通りすがりの旅行者だから・・・かもしれませんね。
この次に、ここの街に来るのは・・・きっと、オリンピックが終わった後かも。
なら、来年は西安にでも行くかなー・・・。とか思いつつ、私たちは機上の人になったのであった。
(終り)
2002年4月29日
午後 4:40:16